初めての方はコチラ

危険!オッカムの剃刀は便利で危険な思考のツール

オッカムのカミソリ

今回は「オッカムの剃刀(かみそり)」について紹介します。

ちょっとマイナーな言葉で、哲学を学んだことのある人でも「あれ、オッカムって誰だっけ?」という人が多いのではないでしょうか。

オッカムの剃刀とはある教えを表した言葉であり、この教えは哲学というよりビジネスシーンなどの日常生活に関わりの深いものでもあります。

今回は、このように謎に満ちたオッカムの剃刀について紹介します!

参考 哲学の道具箱

校長先生と論証は○○ほど良い!

突然ですが、子どものとき、朝の朝礼などで聞かされた校長先生の話ってイヤでしたよね(全国の校長先生、ゴメンナサイ!)。

あれ、なんでイヤだったんだろう。興味がない、とか、お説教くさい、とか色々あるかも知れませんが、一番の原因はきっと「話が長い」からかも!?

もし校長先生の話が、スパッ!と短ければ、もっといい思い出として、きっと頭に残っていたでしょう!

オッカムに言わせれば、これは論証でも同じ。

無駄のない短い論証が優れた論証である、というわけです。

このことを教えてくれるのが、今回のテーマ「オッカムの剃刀」なんです。

どういうものか、少し詳しく見ていきましょう!

オッカムの剃刀とは

オッカムの剃刀とは哲学の本などではつぎのように説明されることがよくあります。

オッカムの剃刀とは
仮定する存在の種類はできるだけ少ないほうがよい

必要がない限り複数のものを仮定してはいけない

(「哲学の道具箱」(共立出版)p107より引用」

 

ところでオッカムって誰?
先生
先生
オッカムとは、中世のイギリスの神学者で、正確には「オッカムのウィリアム」と言うぞ。オッカム村のウィリアムさんという意味合いじゃ。活躍したのは13~14世紀ころというから、日本でいうと、鎌倉幕府が滅びる前後ころじゃな。

余談じゃが、絵画「モナリザ」で有名な「レオナルド・ダ・ヴィンチ」は「ヴィンチ村のレオナルド」という意味合いなんじゃ。なんか似ておるのう

それっぽい説明ですが、余計分かりづらくなったかもしれません。具体的な例で解説してみます。

コーヒーに入っているのは・・・?

ここに入れたてのコーヒーが一杯あります。私はブラック派なので、当然(どういうことだ?)ブラックコーヒーです。

さて、このブラックコーヒーが甘くなくて苦いのはなぜか。二通りの説明をしてみるので、ちょっとどちらが分かりやすいか比べてみてください。

 

A
A 砂糖やミルクを入れてないので苦い

B
B 砂糖10gと「サトウケセール」10gを入れて、砂糖の甘みを消したので苦い

 

・・・さぁ、どうでしょうか。 「Bの説明って何?意味わかんねーよ!」って言わないでください!

はい、おっしゃる通り、「B」の説明ってとてつもなく不自然ですよね。

ちょっとこの「B」の説明の気持ち悪さを覚えておいてください!

「サトウケセール」というのは、砂糖と同じ形をした食べ物で、他になんの雑味を加えることなく砂糖の甘みだけを消すことのできる幻の調味料なのです。残念ながらググってもでてきません。

「B」のように不要な存在を仮定しても、とりあえずは矛盾なく説明できます。どう考えても「A」の説明の方がスッキリしてますし、無駄なエネルギーを使わずに済みますよね。

「物事を説明するときには、無駄なものを入れ込まずスッキリさせた方が分かりやすいし、誤解も減るよ」という原理のことをオッカムは強調したのです。

オッカムの剃刀で説明は完璧!?

それでは、オッカムの剃刀の教えで、無駄なことをスパッとそぎ落とした説明ほど、良い説明と言えるのでしょうか。

実は、物事はそう単純ではないのです!

確かに、単純明快な説明は説得力があるし、聞いていて心地よいですが、実は誤解を招く危険なこともあるのです。

例えば、「惑星の運動」を説明する次の例を見て下さい。

惑星はどんな風に動くの?

「A」物理法則

「惑星は、2つの点からの距離の和が一定となるような点の集合である楕円軌道上を太陽を一つの焦点として動く」

・「B」カミソリ理論

「惑星は、神の法則に従って規則正しく動く」

どうでしょうか?

カミソリ理論の方がスッキリと分かりやすいと思いませんか?

ですが、現代に生きる私たちには、どのくらい理解できるかは別にして、一見分かりにくい「A」の方が正しいと思えるのではないでしょうか。

中世の神学者でもあったオッカムは、議論の達人だったと言われています。おそらく無駄な(と見える)部分をカミソリでバッサリ切り落とし、巧みに人々を説得したのでしょう。

先生
先生
オッカム?そりゃ誰じゃ?
何者かは知らぬが、「必要なしに多くのものを前提してはならない」と言う理屈は、わしの弟子の弟子であるアリストテレスが言っておったようじゃな。
その何とかというヤツは、その理屈を上手く使いこなしたのじゃろう

現代では、「神」を持ち出して説得する場面はそれほど多くはないでしょう。ただし、神に代わるものとして、「有名人の意見」や「科学的な証拠」が用いられることが多くあります。

フクロウ
フクロウ
サトウケセールを飲むとやせるんだよ!
これ、科学的に証明されているんだ!
先生
先生
バカモン!
いい加減なことを言うでない! いかに科学的に証明されていると言っても、重要なのはそこに本当に信頼できる根拠があるかどうかじゃ。
人を説得するために安易に「科学」や「神様」を持ち出すことは、悪気がなくても悪質じゃぞ!

一見、正しそうに見える意見も、もしかしたら、必要な部分までオッカムの剃刀でそぎ落とされてしまったものかも知れません。要注意です!

まとめ

「オッカムの剃刀」は、中世イギリスの哲学者オッカムが主張した「説明の根拠は少ないほど良い」という教えで、「節約の原理」とか「ケチの理論」などとも言われています。

プレゼンをする場面や、人にモノを伝えるときなど、覚えておくと便利ですが、場合によっては誤解や強弁を招く危険な作用もあるので要注意!

さらに、哲学上の考え方の一つに「唯名論」というものがあり、オッカムはこの考え方を採っていました。今回は触れませんでしたが、これはまた別の機会に紹介します。

ひとつ確かに言えることは、「オッカムの剃刀」の説明として取り上げた「サトウケセール」の例、あれこそがカミソリでバサッと切り落とすべき無用の長物だったことでしょう…

 

 

 

記事が良かったと思う方はぜひこちらをお願いします↓

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です